病気を通して得たもの
私の母は3年前、胃がんの手術を受けました。
それも胃の一部ではなく、全摘出の大手術でした。
スキルス性のがんで、胃にべったりとがん細胞がついていたそうです。
手術でとった胃を医師から見せてもらいましたが、白っぽいブツブツが胃に付いているのが素人の目にもはっきりとわかったものでした。
母が体の不調を訴え出したのはがんが発覚するひと月ほど前でした。
胸焼け、便秘、下痢、下腹部の痛み。
本人は直感でしょうか、「がんかもしれない。」と度々口にしていました。
ところが家族たちは、「そんな太ったがん患者いないよ。」「気にしすぎだよ!」と相手にしませんでした。
実際は母すごく太っていて、身長が150センチほどなのに対して体重が70キロぐらいあるまん丸な体型をしていたのです。
食べることが大好きで、それも甘いものに目がなくお饅頭やらケーキやらもよく食べますし、血糖値やらコレステロールに問題はあるにせよ、まさかがんなんて!
私も父も兄弟たちも、「うちの母に限って」という現実逃避にも似た思いがあったように今は思えます。
本人の希望で胃腸科専門の病院で詳しく検査した結果、即入院、手術!となりました。
こうなってからは家族が酷く狼狽し、本人は「ほらね。」といった感じ。
がんのせいで痩せてしまったらそれは末期がん。
太っているからといって安心はできないのだと思い知りました。
母の入院で家族の生活は一変。
完全看護とは言え、母をひとりにしたくないから交代で付き添い、リハビリに付き合い、家事を分担しました。
術後はすごく痛むらしくて、体を撫でたり嘔吐物の処理、トイレの世話。
退院後は、栄養士さんの指導の下に消化のいい栄養のあるものを食べさせるために日々悪戦苦闘。
胃を取ってしまったあとは、食べ物がうまく消化できませんから当然食が細くなり、
食べるものの嗜好もずいぶん変化があったせいで、70キロあった巨体が今や40キロの超スリム体型に変わってしまいました。
毎月の検査で、今のところがんの転移はありません。
それどころか、血圧もコレステロールもいたって正常で健康そのものです。
家族はみな健康診断を積極的に受け、体の不調にとても敏感になりました。
生まれて初めて健康に生きられることへのありがたさを感じながら生活しています。
すべて母の体を通して教えられたもの。
母も家族もすごく苦労したし、精神的にも大変だったけれど大きなものを得たように思います。
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